あなたはあくたれてみたいですか?
「あくたれラルフ」
ジャック・ガントス作:ニコール・ルーベル絵
まさきるりこ訳:瑞雲社
こどもたちは、いい子でいようと思っています。けれども、いつもいい子でいることは、決してたやすいことではありません。ときには、悪い子でありたいという誘惑に抵抗できなくなります。
『あくたれラルフ』の主人公ラルフのあくたれぶりときたら、常識で考えたら度外れています。人形の首を引っこ抜くは、パーティーのテーブルに出ているクッキーをどれも一口ずつかじって味見をするは、食堂に自転車でとびこんできてテーブルに衝突するは。セイラは、ときどきラルフが好きでなくなることがあります。
おかあさんは、とても悲しくなることがあるし、おとうさんは怒って、「おい、ラルフ、すこしは まともになれ」といいます。そして、ある夜、サーカスを見に行ったとき、ラルフはおおいに暴れまくり、あまりのことに我慢できなくなった家族は、ラルフをサーカスにおいたまま帰ってしまいます。ところで、じつは、ラルフというのは、人間ではなくセイラの飼っているネコなのです。「なまごみ熱」にかかってしまい、「さびしい」と泣き出します。もちろん、おはなしは、おはなしらしく、ハッピーエンドで終わります。
この絵本が大好きなこどもがたくさんいます。ラルフがあくたれるたびにうっとりとため息をついた男の子が何人もいました。なかには、「この本、きらい」といった女の子もいます。ラルフを見ているとドキドキしてくるのかもしれません。どんなにあくたれても、セイラはラルフを見捨てませんでした。ラルフも頑張ってセイラを悲しませないように努力します。でも、がまんできずにあくたれてしまうこともないわけじゃありませんけどね。